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梅鉢屋

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丸山 壮伊知 代表
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丸山 壮伊知 代表 マルヤマ ソウイチ
SOUICHI MARUYAMA
梅鉢屋
生年月日:1955年8月21日
出身地:東京都
血液型:A型
趣味・特技:DIY、スキー、オートバイ
好きな本・愛読書:ノンフィクション系
好きな映画:三谷幸喜作品
好きな音楽:ジャズ系
好きな場所・観光:大都会のカフェ
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■代表が「江戸砂糖漬」の職人を志したきっかけをお聞かせ下さい。
他に何もできなかった、というのが本当のところかもしれません。もともとこういう家業の家に生まれましたし、下町の商人や自営業のせがれというものは、知らず知らずのうちにさせられた家の手伝いが修業のようなものになり、自然と家業に入って行くものなんですよね。それこそ大学に入って車の免許でも取ろうものなら配達にも行かされますしね(笑)。幼い頃には菓子を作る祖父や父の姿を見ていましたが、幼心にも受け継ごうなんて思いはありませんでした。江戸っ子気質といいますか、親は子供に「家業を継げ」なんて言わないんですよね。父も祖父に言われたことはなかったようですし、もちろん私も父から言われたことなんて一度もありません。それでも、自然とこの仕事に入っていく、その繰り返しなんでしょうね。ですから、何かきっかけがあったわけではなく、本当に気がついたらこの仕事をやっていただけのことなんですよ。それが私の場合、たまたま目の前にあった仕事がこの「江戸砂糖漬」だったわけです。

丸山 壮伊知 代表 丸山 壮伊知 代表

■梅鉢屋さんが守っていらっしゃる伝統の砂糖漬『野菜菓子』について、ご存じない方のために是非、ご紹介下さい。
「野菜菓子」は江戸時代の半ばぐらい、江戸時代の文化が一番花開いた文化・文政の頃に、既に売られていたという記録の残る菓子です。平安時代などからの歴史を持つ京のお菓子から比べれば、まだまだ新進気鋭のお菓子ですが、それでも200年は経過していますね。
砂糖漬けの歴史を紐解くと、どうやら江戸で自然発生的に起こったものではなく、大阪・京都あたり、さらに遡れば北九州、山口あたりから発祥したものが江戸に伝わってきたのではないかと推測されているお菓子でもあります。さらにその前は? と考えると、中国や朝鮮半島の大陸からの影響があったのではないかと考えられています。推測の域ではありますが、大陸から伝わる際に琉球のサトウキビと、北九州方面にあった地場の農産物、野菜がコラボレーションされ、このあたりで砂糖漬けの原型になったものが誕生して東へ東へと伝わりながら種類を増やしたようです。
砂糖漬けに類したお菓子は世界各国にも見られますが、全てフルーツで、表面を砂糖でカチンカチンにしてしまうお菓子なんですね。これは日本の砂糖漬けとは風味が全く違います。
「ではなぜ日本は野菜なのか?江戸に伝わったのはなぜ野菜だったのか?」
これはよく質問されるのですが、当時の日本にあった果物といえば柿ぐらいで、今の様な多品種の果物を手に入れられる環境ではなかったんです。結局手に入れられるのは畑で作った野菜ですから、手っ取り早いところで野菜を砂糖漬けにしたというわけです。正直、砂糖漬けにするにはフルーツの方が適していたのかもしれませんが、日本人は「砂糖漬け」そのものを知らなかったでしょうし、いかに「甘味」という貴重なものを摂取しつつ食料を保存するか、ということに着目したからでしょうね。
人間にとって食料の保存は大テーマですが、保存と言えば乾燥、塩漬けが最初です。でも、人間は勝手なものでそれだけでは飽き足らずに甘いものも欲するようになった、それで塩漬けに反して砂糖漬けを発明し、甘味への欲望を満たしたのではないか?とも考えられています。

■江戸時代から伝わる砂糖漬のレシピはどのようなものでしょうか?
丸山 壮伊知 代表それがですね、「砂糖漬け」というものにレシピは存在しないんですよ。例え昔からある野菜であっても「レシピ」は存在しないんです。というのも、相手にしているものが天然の素材なので、砂糖何グラムなんていうレシピがあっても、全く違うものになってしまうんですね。
つまり、同じ「大根」であっても季節によって、収穫された畑によっても全く違うものですから、同じ方法で作ることなんてできないんです。何よりも最大の違いは「野菜の変化」ですね。私が20代の頃の大根と、今の大根では素材自体が変わって来ていますし、それこそ明治時代の大根と昭和の大根、今の大根と、見かけは白い大根でも性質も風味も違うんですよ。ですから、江戸時代と同じやり方でも素材が違うから同じものが作れない、レシピが存在しても意味がないというわけです。
どの野菜でも製造の大きな流れは根本的に変わりませんが、どれぐらい煮るか、お砂糖の濃度は? という細かい部分においては季節、風土に合わせて加工しなくてはなりませんし、そのためには素材に関しての研究もしなくてはなりません。もちろん野菜の持つ傾向はありますが、少しずつ変化する野菜、その時代、時代に合わせて作っていくことが必要で、同じ感覚で砂糖漬けはできないんですね。

■代表がこの仕事を続ける中で大変なこと、喜びを感じることを教えて下さい。
経営者としては、毎日このような商品を作り、利益を出すのが大変ですね。職人としては、最近の素材で昔ながらの砂糖漬けの味を出すことが難しくなってきている点が大変です。素材自体がどんどん変わってきているので、昔ながらの味を表現するのに苦労しますね。ただ、苦労のない仕事はないと思っていますから(笑)。
喜びを感じるのはやはり商店ですから、自分の作った商品をお買い求め頂くことが嬉しいですね。と同時に、できるだけ正確に砂糖漬けを知って頂き、丹精込めた砂糖漬けをお客様のライフシーンに合わせて召し上がって頂けることが喜びです。野菜菓子の価値を知り、江戸から伝わるものを現代で活かそうと求めて下さるお客様のもとでお菓子が活きると、最高の満足感を得られます。

■最後に地域の皆様にメッセージをお願い致します。
「若い頃、学生の頃には「たまたま生まれ育ったから」と、この家業の内容や歴史、伝統を意識しませんでしたが、この年になると父や祖父の代から続いてきたもの、江戸から続く技術だということ、更には遠く中国大陸からと考えると、伝統の凄さ、それに携わっていることの重みを物凄く感じます。自分で言うのもおこがましいですが、純粋に凄いことだと感じるんです。
私も子どもがいますが、「これをやれ」と言う気はなく、「やりたきゃやればいい」と思っています。ただ。自分の代、自分が動ける範囲ではこの伝統をしっかりと守り続けて、地域の皆さんにこの伝統を知って頂けるように頑張っていきたいですね。
また、この地域は「ものづくりの街」。本当にすごい技術を持つ方々がたくさんいらっしゃいます。ものづくりの原点がある街だからこそ、その凄さをより多くの方に感じて欲しいですね。できるだけたくさんの方に「墨田って凄いな」と、墨田をトータルで知ってもらいたいですし、そのために私も頑張って皆さんに伝統をお伝えしていきたいと思います。

※上記記事は2012.2に取材したものです。
情報時間の経過による変化などがございます事をご了承ください。

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